企業、投資家のぬるい均衡点【Ⅱ】 ~ エージェンシーコストと「モノいわない投資家」の関係 ~
August 1, 2007 10:02 PM written by

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こんにちは、ロベルト本郷です。このブログを始めてからというもの、Google Analyticsのデータを見るのが楽しみだったりします。企業、競合(苦笑)からアクセスをいただいているとともに大学からのアクセスも多く、ありがたい限りです。

しかし!

なぜかアクセス上位がすべて国立大学なのです。東京大学、鹿児島大学、東北大学、筑波大学、岡山大学、京都大学。なぜ?それに続くのは・・・コーネル大学(米)。Why?

ううむ。これからは私大の人にもウケる内容を書こう・・・と思ったのですが、検討がつきません。ヘルプミー。

さて、前回のエントリー『企業、投資家のぬるい均衡点【I】』の続きです。

今回は、そもそも論としての「アクティビスト投資」について考えます。

■ アクティビスト投資とは

アクティビスト投資とは『株主が企業に対して株主リターン改善に向けた行動を迫ること』です。具体的には株を(大量に)取得して「モノいう株主」として経営提案を行うことです。日本の法律でも以下のように認められています。

  • 1%以上の株主は株主総会の議決提案権があり、
  • 3%以上の株主は総会召集請求権や取締役・監査役の解任請求権、会計帳簿閲覧請求権があり、
  • 10%以上の株主は会社解散請求権があります。

(逮捕されて有罪になっちゃったけど)MACアセットの村上氏や、スティールパートナーズのリヒテンシュタイン氏などはこれに当たります。

古くは、Kirk Kerkorian氏もそうですし、会社としてアクティビスト投資を行うファンドを運営しているところもいくつかあります。

基本的には、何回かに分けて解説した、次のような企業がその対象になります(なお、harry_gさんのブログエントリーが非常によくまとまっていたのでそちらも是非ご参照ください)。

  1. 資本構成がいびつで
  2. キャッシュフローが安定している
  3. 不動産等の含み益がある
  4. リストラ余地がある

■ アクティビスト投資の特徴とその歴史

80年代の映画、『ウォール街』を見ていただくと一目瞭然なのですが(これは名作です。見るべし!)、70-80年代のアメリカにおけるアクティビスト投資は、

『企業の経営権ごと買収 → 切り売り』

というものでした。この映画で描かれている時期は、LBO市場やジャンクボンドの創成期で、『買収対象資産を担保にして金を調達し、買収会社を切り売りして利益を出す』という方法が活発に取られていました。

ウォール街 〈 特別編 〉

» ウォール街 〈 特別編 〉

しかし、自分の力だけですべて買収するということは、買収会社のリスクを丸抱えすることになります。当然うまく行くものもあれば、悲惨な結果に終わったものもありました。

時は飛んで20年後、21世紀(2001~)に入ってからのアメリカにおけるアクティビスト投資の特徴は大きく変わりました。コロンビア大学等の研究論文「Hedge Fund Activism, Corporate Governance, and Firm Performance」では以下の特徴が挙げられています(原文読みたい人はこちら(PDF)からどうぞ)。

  • アクティビストヘッジファンドの戦術の大部分は対立的なものではなく、3分の2のケースで成功、あるいは部分的成功をおさめている。
  • 実際にアクティビストヘッジファンドが当該企業のControlを狙うケースは非常に少ない。平均のOwnership Stakeは10%である。これが1980年代のCorporate Raidersとの違いである。
  • アクティビストヘッジファンドがターゲットとする企業はアナリストカバレッジが比較的多く、機関投資家保有比率も高く、”洗練された投資家ベース”を持っている傾向がある。
  • 市場はアクティビストヘッジファンドの動きを歓迎する方向にある。平均の超過リターンは5~7%であり、その後1年で反転する傾向は特に見られていない。

いかがですか?20年前の「乗っ取り」のイメージとは程遠いことが伺えると思います。

■ そもそも、アクティビストはなぜ「モノ言う」のか?

もう一度、議論を戻して復習してみましょう。そもそもアクティビストが「モノ言う」のは、経営陣による経営が非効率的であるが故に、本来の企業価値が隠されている(と主張する)からです。

そもそもなぜ、このような状況が発生するのでしょうか?ここで出てくるのが、『エージェンシーコスト』という概念です。

» プリンシパル-エージェンシー理論とは - Wikipedia

詳細はWikipediaをご参照いただくとして、経営者と株主の関係におけるエージェンシーコストとは以下のようになっています。

『経営者(経営委託者)が株主(オーナー)の意向にそぐわない意思決定を行うことによるコスト、及び、経営者が株主よりも情報優位にあることを利用して、自己の利益を高めようとすることによって発生する株主側のコスト。』 (出典:exBuzzwords

つまり、このエージェンシーコストの削減(=隠された企業価値の顕在化)のために、アクティビストは「モノ言う」のだと思います。

■ 『現代型』アクティビスト投資が成功する条件

コロンビア大学の論文を読んで一番意外に思ったのは、『アクティビストヘッジファンドがターゲットとする企業はアナリストカバレッジが比較的多く、機関投資家保有比率も高く、”洗練された投資家ベース”を持っている傾向がある』ということです。

この点と、『実際にアクティビストヘッジファンドが当該企業のControlを狙うケースは非常に少ない。平均のOwnership Stakeは10%である。これが1980年代のCorporate Raidersとの違いである』を合わせて考えると、『現代型』アクティビスト投資が成功するためには次のことが言えるのではないでしょうか。

つまり、「モノ言う株主」の主張と、現経営陣の主張をフェアに吟味し、判断を下せる株主層の存在です。

つまり、「モノ言う」株主が10%持って、いくら正当な主張をしたとしても、残りの株主が動かなければ何も変わらないのです。

■ 日本のアクティビスト投資の現状

ひるがえって日本では以下のようなアクティビスト投資が起きています。

  • 楽天 - TBS
  • ダヴィンチアドバイザーズ- TOC
  • スティールパートナーズ - ブルドックソース

代表的なアクティビスト投資(楽天はちょっと違うけど)に対して、日本ではことごとく失敗しているのはなぜでしょうか。それは日本におけるアクティビスト投資が現代型では成功しないから、だと思います。

TBSの安定株主工作に応じる取引先、ダヴィンチによる一株1300円のTOB価格より低い価格でも株を買い進めるTOC創業者グループ、『ソースの味を守れ!』と年間利益の4~5年分をスティールに渡すことに賛成した他の株主。

共通点は、『資本市場のロジック外で動いている』ことです。

スティールパートナーズはブルドックソースに100%の買収を仕掛けましたが、それまでの5年間、10%前後の株主でした。5年待って、彼らも気付いたのだと思います。

『あぁ、日本のアクティビスト投資は80年代のアメリカ型でないと成功しないんだ。100%買って、自分ですべて変えないかぎり、何も動かないんだ』

と。

■ 金融リテラシー

この2回で、最近の「モノ言う株主」の動きとその顛末を書きました。僕の日本市場への見方は(誤解を恐れずに言うと)以下の通りです。

『日経平均を8,000円から18,000円まで引上げた主役は外国人投資家である。日本の株式市場が今後も発展するには、世界の資金を呼び込む魅力が必要だ。日本の個別企業には魅力的な企業もあるが、日本の株式市場(ハコもプレーヤーも)そのものは非常に洗練されていない(=野暮ったい)。』

僕はアクティビストの言う事は正しいといっているわけではありません。しかし、アクティビストの主張と、経営陣の主張を比較できない(しようとしない)「モノ言わない株主」は非常に問題があると思っています。

経営陣、取締役会、株主。すべてがなぁなぁで「ぬるく均衡」しているような会社(国)に、あなたは投資したいと思いますか?

僕が出来ることは限られていますが、皆様と一緒に金融リテラシーを高めることによって、少しでも高いレベルで企業と株主が均衡し、日本市場の魅力が増していくことを願っています。

頑張っていきましょう! (← 実は愛国派)

PS. やはりVan Halenを聴きながら書くと熱くなってしまいますね、、、

【百式管理人のコメント】

今回も熱いロベルト本郷w。だんだん大学の授業のようになってきました。自分が大学生のときの先生も彼ぐらい熱かったら今頃(ry

さて、ひるがえって彼の主張。今回の話題に関しては、いわゆる「外国に乗っ取られる!」といった感情的な議論が多いような気がしないでもないですよね。しかし、いつまでもそう言っていては将来の日本(というか自分)はどうなるのか、と不安になるばかり。良くも悪くもグローバル化が進んでいる今、金融のテクノロジーも世界標準で考える必要があるのではないか、と。

今タイにいますが、こちらで暮らしているとやはり日本からは見えない世界が見えてきます。特にこちらで暮らしている日本人や他の外国の人がなぜここにいるか、どういう風に世界を舞台にして働いているのかを知ることはとても勉強になっています。

ITの世界ではすでに当たり前のように一般の人(=個人)が世界のテクノロジーを使えるようになっています。金融はどうでしょうか。世界を見据えつつ、自分の資産を賢く育てて行きたいですよね・・。

このブログはロベルトの提案で始まったものですが、普段使わない頭を使うとても良い材料になっています。いつもながら感謝感激!次回もよろしく!

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